胆のう摘出は後悔する?手術を決める前に知っておきたい判断のポイント
大阪・梅田の大阪日帰り外科胆のう・胆石クリニック、院長の岩村宣亜です。
胆石で胆のうの摘出手術を勧められたものの、「取ってしまって本当に大丈夫だろうか」「手術のあとに不調が続いたら後悔するのでは」と、決めきれずにいる患者さまは少なくありません。
胆のうを取ったあとも、多くの方は手術前と同じように日常生活を送っています。一方で、手術後にお腹の不調が続く方も、一定の割合でいることがわかっています。後悔しないためには、手術で改善が期待できること、手術によるリスク、そして治療や手術をしない(放置した)場合のリスクを知っておく必要があります。そのうえで、ご自身の症状に何が一番合っているのかを適切に見極めることが大切です。
この記事では、胆のう摘出後に起こりうる体の変化や手術のリスク、手術を勧める理由、手術を決める前に確認したいポイントを解説します。
結論|多くの方は手術後に日常生活へ戻れます
胆のう摘出術は、症状のある胆石に対して標準的に行われている治療です。胆石発作の繰り返しや、胆のう炎・膵炎といった合併症を防ぐことを目的としています。
胆のうを取っても、消化を助ける胆汁は肝臓でつくられ続けます。そのため、多くの方は手術前と同じように、食事や仕事などの日常生活を送ることができています。
ただし、手術によってすべての症状が消えるとは限りません。手術を受けるかどうかを考えるときは、「手術で何が改善するのか」を知っておくことが大切です。
手術後も症状が残る方は一定数います
胆のう摘出術を受けても、手術前に感じていた腹部の症状がすべて解消するとは限りません。
胆のう摘出後の経過を調べた複数の研究を分析した報告では、手術前からあった上腹部の痛みが手術後も続いた割合は、研究によって異なり、多いものでは約3割に上りました1)。
また、胆石と腹痛のある患者さまを対象にオランダで行われた大規模な臨床試験では、従来の基準で手術を判断したグループにおいて、1年後に腹痛が消失していたのは約6割でした2)。
これらの結果から読み取れるのは、胆石があっても、現在の痛みや不調の原因が胆石とは限らないということです。症状の原因が胃や腸など別の臓器にある場合、胆のうを摘出しても改善は見込めません。手術の効果は、「その症状が胆石によるものかどうか」に大きく左右されます。
症状と手術の目的が合っているかが大切です
胆石による典型的な痛み(胆石発作)では、みぞおちから右上腹部に強い痛みが起こり、15〜30分以上続くのが特徴です。痛みが背中や右肩へ広がったり、痛み止めで治まったりすることもあります。このような症状がある場合は、胆のうを取ることで発作の再発を防ぐ効果が期待できます。
一方で、お腹の張りや胃もたれ、胸やけといった症状は、胆石が原因ではないこともあり、手術では改善しない場合があります。手術を決める前に、今の症状が胆石によるものかを医師と確認しておくことが、手術後の「こんなはずではなかった」を防ぐことにつながります。
手術後に起こりうる体の変化
胆のうは、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮し、食事に合わせて腸へ送り出す臓器です。胆のうを取ると、胆汁は肝臓から腸へ少しずつ流れ続けるようになります。この変化に体が慣れるまでの間、お腹の調子に変化を感じる方がいます。
下痢・軟便などお腹の調子の変化
手術後しばらくの間、特に脂質の多い食事をとったあとに、下痢や軟便、お腹の張りを感じることがあります。多くは時間の経過とともに落ち着き、食事の内容や量を調整することで、日常生活に支障のない範囲に収まります。症状が長く続く場合や、生活に影響が出ている場合は、手術を受けた医療機関に相談してください。
胆のう摘出後症候群
手術後に、手術前と同じような腹痛や消化不良が続いたり、新たに現れたりする状態を「胆のう摘出後症候群」と呼びます。
原因はさまざまで、胆管に残った結石、胃や腸の病気、消化管の働きの乱れなどが関わることがあります。前の章でお伝えしたように、手術前の症状が、もともと胆石以外の原因によるものだった場合も含まれます。症状が続く場合は、原因を調べたうえで、それに応じた治療を行います。
胆のう摘出後の体の変化や食事の注意点は、「胆のうを取るとどうなる?摘出後の体の変化と生活の注意点を解説」で詳しく解説しています。
手術そのもののリスク
胆のう摘出術は国内でも広く行われており、現在はその多くが内視鏡(腹腔鏡)による手術です。それでも、手術である以上、一定のリスクを伴います。
腹腔鏡下胆のう摘出術の主な合併症
腹腔鏡下胆のう摘出術の主な合併症には、次のようなものがあります。
- 出血
- 胆汁の漏れ(胆汁漏)
- 胆管の損傷
- 傷の感染
- 全身麻酔に伴う合併症(肺炎、血栓症など)
いずれも頻度は高くありませんが、胆管の損傷などでは、追加の処置や手術が必要になることがあります。また、胆のうの炎症が強い場合や、過去にお腹の手術を受けて癒着がある場合などは、手術の難易度が上がります。手術を受ける際には、ご自身の年齢や持病、胆のうの状態をふまえたリスクについて、担当医から説明を受けておくことが大切です。
開腹手術に切り替わる場合
手術中に、炎症による癒着が強い、出血がある、胆管の位置が確認しにくいなどの理由で、腹腔鏡で安全に手術を続けることが難しいと判断した場合には、お腹を切開する開腹手術に切り替えることがあります。これは、安全を優先するための判断です。開腹手術になった場合は、入院期間や回復までの期間が長くなります。
手術が勧められる理由と、手術しない場合のリスク
胆のう摘出術を検討する際は、手術のリスクだけでなく、手術をしない場合に起こりうることもあわせて知っておく必要があります。
発作の繰り返しと、胆のう炎・膵炎への進行
胆石による発作を一度起こした方のうち、およそ半数に再び発作が起こるとされています。また、症状のある胆石では、急性胆のう炎や胆石性膵炎、胆管炎、黄疸といった合併症が、年に0.5〜3%の割合で起こると報告されています3)。
これらの合併症を起こすと、緊急の入院や治療が必要になることがあります。また、炎症が強い状態での手術は難易度が上がります。こうした理由から、症状のある胆石に対しては、胆のう摘出術が第一の選択肢とされています。
薬や経過観察を選ぶ場合の注意点
手術以外の選択肢として、薬で石を溶かす治療や、経過をみる方法もあります。ただし、薬で石を溶かせるのは、石の種類や大きさなどの条件を満たす一部の方に限られます。また、石が溶けても胆のうは残るため、再発することが少なくありません。
症状が軽く合併症のない方を対象にイギリスで行われた臨床試験では、手術をせずに経過をみたグループと手術を受けたグループの間で、1年半後の生活の質に大きな差はみられませんでした。一方で、経過をみたグループの25%は、その期間中に手術を受けていました4)。
経過観察を選ぶ場合は、どのような症状が出たらすぐに受診すべきかを確認したうえで、定期的に検査を受けることが大切です。手術以外の治療については「胆石を手術しないで治す方法はある?薬・破砕・経過観察を専門医が解説」で、放置した場合のリスクについては「胆石をほっとくとどうなる?自然に治るのか、受診の目安を解説」で詳しく解説しています。
手術を受ける前に確認しておきたいこと
手術後に「思っていたのと違った」と感じることのないよう、手術を決める前に担当医と確認しておきたいポイントをまとめます。
その症状は胆石によるものか
まず確認したいのは、今の症状が胆石によるものかどうかです。前の章でお伝えしたように、胆石があっても、症状の原因が胃や腸など別の臓器にあれば、胆のうを取っても改善は見込めません。
痛みが起こる場所や続く時間、食事との関係などを担当医に詳しく伝えたうえで、腹部超音波(エコー)検査などで胆石と胆のうの状態を確認します。
検査の内容については「胆石の検査方法とは?血液検査でわかるのか、エコーやCTとの違いを解説」で解説しています。
手術の目的と、ほかの選択肢の説明を受けたか
手術を勧められたときは、「何のために手術をするのか」を確認しておきましょう。発作の再発を防ぐためなのか、胆のう炎などの合併症を防ぐためなのかによって、手術を受ける時期や必要性の考え方が変わります。
あわせて、手術をしない場合にはどのような経過が考えられるのか、ほかの選択肢はあるのかについても説明を受けておくと、納得したうえで治療方法を選べます。
手術の方法と、入院か日帰りか・仕事復帰の目安
手術の方法や入院の有無、手術後に仕事や家事を再開できるまでの期間の目安も、事前に確認しておきたい点です。腹腔鏡での手術は傷が小さく、デスクワークであれば術後数日〜1週間程度での復帰が目安です。
医療機関によっては、条件が合えば日帰りで手術を受けられる場合もあります。入院期間や日帰り手術の条件については「胆石の入院期間はどのくらい?日帰り手術の適応と費用も解説」で詳しく解説しています。
費用と手術後の通院
胆石の手術は健康保険の対象で、高額療養費制度により1か月の自己負担には上限があります。手術前の検査や手術後の通院も含め、おおよその費用を確認しておくと安心です。費用の詳細は「胆石の手術費用はいくら?日帰りと入院の違い・自己負担の目安を解説」をご覧ください。
胆のう摘出に関するよくあるご質問
Q.胆石があっても症状がない場合、手術を受けたほうがいいですか?
症状のない胆石(無症状胆石)は、手術をせずに定期的な検査で経過をみることが一般的です。症状がないまま手術を受けても、手術のリスクを上回る利益が得られるとは限らないためです。
ただし、次のような場合は、症状がなくても手術を検討することがあります。
- 胆のうの壁が厚くなっていて、胆のうがんとの区別が難しい場合
- 胆のうが石で満たされていて、超音波検査で内部を十分に観察できない場合
経過観察中に痛みなどの症状が出てきた場合は、あらためて治療方針を相談しましょう。
Q.手術を受けるか迷ったら、ほかの医師の意見を聞いてもいいですか?
はい。手術の必要性や方法に納得できない点がある場合は、ほかの医療機関の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用できます。担当医に紹介状と検査結果を用意してもらうと、検査を受け直さずに意見を聞ける場合があります。
ただし、急性胆のう炎や胆管炎を起こしている場合は、早めの治療が必要です。強い痛みや発熱があるときや、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)ときは、判断を先送りにせず、すぐに医療機関を受診してください。
Q.胆のうを取ると寿命に影響しますか?
胆のうを摘出したことが原因で寿命が縮まるという医学的根拠はありません。胆のうを取ったあとも胆汁は肝臓でつくられ続けるため、多くの方は手術前と同じように生活を続けています。
手術後の体の変化や、生活で気をつけたい点については「胆のうを取るとどうなる?摘出後の体の変化と生活の注意点を解説」で詳しく解説しています。
まとめ|症状の原因と手術の目的を確かめてから決めましょう
胆のうを摘出しても、胆汁は肝臓でつくられ続けます。そのため、多くの方は手術前と同じように日常生活を送っています。一方で、手術前の症状が胆石以外の原因によるものだった場合は、胆のうを取っても症状が残ることがあります。
手術には出血や胆汁漏、胆管の損傷などのリスクがあります。ただし、症状のある胆石を治療せずにいると、発作を繰り返したり、胆のう炎や膵炎へ進んだりするおそれもあります。
手術を受けるかどうかを決める前に、担当医と次の点を確認しておきましょう。
- 今の症状が胆石によるものか
- 手術で何の改善を目指すのか
- 手術のリスクと、手術をしない場合の経過
これらを理解したうえで治療方針を検討することが、納得のいく治療につながります。
胆のう摘出を迷っている方は当院までご相談ください
大阪日帰り外科胆のう・胆石クリニックは、胆石・胆のうポリープなど、胆のう疾患の診断と治療に特化した専門クリニックです。京都大学医学博士(肝胆膵移植外科学)・消化器外科専門医の岩村院長が、診察から手術まで担当いたします。
「今の症状が本当に胆石によるものなのか」「胆のうを取ったあとの生活が心配」といったご相談にも応じています。健診などの検査結果票をお持ちのうえ、ご来院ください。
診察で日帰り手術の適応と判断した方には、内視鏡(腹腔鏡)による日帰りの胆のう摘出術を行っています。
JR大阪駅から徒歩3分、土日祝も診療しています。
受診のご予約は、お電話またはWeb予約から受け付けています。また、医師によるLINE無料相談も行っています。お気軽にご相談ください。
参考文献
1) Lamberts MP, Lugtenberg M, Rovers MM, et al. Persistent and de novo symptoms after cholecystectomy: a systematic review of cholecystectomy effectiveness. Surg Endosc. 2013;27(3):709-718.
2) van Dijk AH, Wennmacker SZ, de Reuver PR, et al. Restrictive strategy versus usual care for cholecystectomy in patients with gallstones and abdominal pain (SECURE): a multicentre, randomised, parallel-arm, non-inferiority trial. Lancet. 2019;393(10188):2322-2330.
3) European Association for the Study of the Liver. EASL Clinical Practice Guidelines on the prevention, diagnosis and treatment of gallstones. J Hepatol. 2016;65(1):146-181.
4) Ahmed I, Hudson J, Innes K, et al. Effectiveness of conservative management versus laparoscopic cholecystectomy in the prevention of recurrent symptoms and complications in adults with uncomplicated symptomatic gallstone disease (C-GALL trial): pragmatic, multicentre randomised controlled trial. BMJ. 2023;383:e075383.
