胆のう腺筋腫症と言われたら|がん化の心配と手術が必要なケースを解説
大阪・梅田の大阪日帰り外科胆のう・胆石クリニック、院長の岩村宣亜です。
健診の腹部超音波(エコー)検査で「胆のう腺筋腫症」や「胆のう腺筋腫症疑い」と言われ、「がんにならないだろうか」「手術が必要なのだろうか」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
胆のう腺筋腫症の多くは良性です。症状がなく、がんを疑う所見もなければ、定期的に腹部超音波検査を受けながら経過をみるのが一般的です。一方、腹痛の原因になっている場合や、胆石を合併している場合、胆のうがんと区別できない場合は、胆のうを摘出する手術を検討します。
この記事では、胆のう腺筋腫症と言われたときにまず確認したいこと、がん化の心配、手術が必要になるケース、費用の目安を解説します。
結論|胆のう腺筋腫症と言われたら、まず症状とがんを疑う所見を確認しましょう
胆のう腺筋腫症と言われた後の対応は、症状があるかどうかと、胆のうがんとの区別がついているかどうかで変わります。
胆のう腺筋腫症とは
胆のう腺筋腫症は、胆のうの壁が部分的、または全体的に厚くなる良性の病気です。胆のうの壁の中に「RAS(ロキタンスキー・アショフ洞)」と呼ばれる小さなくぼみが増えるのが特徴で、腹部超音波検査ではこのくぼみや、コメット様エコーと呼ばれる特徴的な像が診断の手がかりになります。
多くは自覚症状がなく、健診の腹部超音波検査で偶然見つかります。病気の仕組みや種類については、「胆のう腺筋腫症とは?がんとの違いと治療の考え方」で詳しく解説しています。
状態別の対応の早見表
状態ごとの主な対応は、次のとおりです。
| 状態 | 主な対応 | ポイント |
|---|---|---|
| 症状がなく、胆のう腺筋腫症として典型的な所見 | 経過観察 | 年1回程度の腹部超音波検査で、変化がないかを確認する |
| がんとの区別が難しい所見がある | 精密検査 | CTやMRI、超音波内視鏡で詳しく調べ、区別できなければ手術を検討する |
| 腹痛をくり返す、胆石を合併している | 胆のう摘出術を検討 | 腹腔鏡下胆のう摘出術で、胆のうごと摘出する |
がん化の心配については「がん化の心配は?胆のう腺筋腫症とがんの関係」、手術が必要になるケースは「手術が必要なケース|胆のう腺筋腫症で胆のう摘出を検討するとき」で詳しく解説します。
なお、健診で「胆のう壁肥厚」と書かれていて、原因がまだわかっていない場合は、「胆のうの壁肥厚とは?考えられる原因とがんの可能性、検査の進め方」もあわせてご覧ください。
がん化の心配は?胆のう腺筋腫症とがんの関係
胆のう腺筋腫症と言われて、いちばん気になるのは「がんにならないか」ではないでしょうか。胆のう腺筋腫症そのものががんに変わるとは考えられていません。ただし、がんとの区別が難しい場合や、胆のう腺筋腫症の型によっては、注意が必要なことがあります。
胆のう腺筋腫症そのものががんに変わるとは考えられていません
胆のう腺筋腫症は、胆のうの壁のつくりが変化して厚くなる良性の病気で、腫瘍とは異なります。日本胆道学会は、胆のう腺筋腫症から胆のうがんが発生しやすいという関連はないとしています。
一方で、胆のう腺筋腫症とがんの関係について、十分な根拠はまだないとも説明されています。「心配はまったくない」とまでは言い切れないため、定期的に検査を受けて、変化がないかを確認することが大切です。
注意が必要なのは、がんとの区別が難しい場合です
胆のうがんも、胆のうの壁が厚くなる形で見つかることがあります。そのため、画像検査だけでは、胆のう腺筋腫症とがんの区別がつきにくい場合があります。特に、胆のうの壁全体が厚くなるタイプ(びまん型)は、がんと見え方が似ることがあります。
また、胆のうの中央部分が輪のように厚くなり、くびれができるタイプ(分節型)は、がんの合併に注意が必要とされています。胆のう摘出術を受けた7,757例を調べた国内の報告では、分節型の胆のう腺筋腫症があった方の6.5%に胆のうがんが見つかり、分節型がない方の3.8%を上回りました。この差は、60歳以上の方でよりはっきりしていました。一方、胆のうの底部が厚くなるタイプ(底部型)とびまん型では、胆のうがんとの関連はみられませんでした1)。
この数字は、手術を受けた方を対象にした報告によるもので、胆のう腺筋腫症と言われた方すべてに当てはまるものではありません。分節型と言われた場合は、検査の間隔や精密検査の必要性について、医師とよく相談しましょう。
がんとの区別に使う検査
がんとの区別には、主に次の検査を組み合わせます。
- 腹部超音波(エコー)検査:RASやコメット様エコーなど、胆のう腺筋腫症に特徴的な所見があるか、胆のうの壁の層構造が保たれているかを確認します。
- CT検査:壁の厚さや、周りの臓器への広がりがないかを確認します。必要に応じて、造影剤という薬を注射して撮影します。
- MRI検査:壁の中のRASを確認しやすく、胆のう腺筋腫症の診断に役立ちます。
- 超音波内視鏡(EUS)検査:口から入れた内視鏡の先端から出る超音波で、胃や十二指腸の中から胆のうの壁を詳しく観察します。
どの検査が必要かは、エコーの所見や症状をもとに医師が判断します。精密検査を受けてもがんと区別できない場合は、胆のうを摘出し、顕微鏡で調べる検査(病理検査)で診断を確定することになります。
胆のう腺筋腫症と言われたら受診は必要?経過観察の目安
健診で胆のう腺筋腫症と言われたら、一度は医療機関を受診し、典型的な胆のう腺筋腫症かどうかを確認しておくと安心です。その後、症状やがんを疑う所見がなければ、定期的な検査で経過をみます。
健診で「胆のう腺筋腫症」と書かれていたら
健診の腹部超音波検査では、胆のうの壁が厚くなっていて、小さな袋状の構造やコメット様エコーを伴う場合に「胆のう腺筋腫症」とされます。判定は「要再検査」となるのが一般的で、再検査の時期は3か月後・6か月後・12か月後のいずれかが目安として示されます。
一方、胆のうの壁の層構造に乱れがあるなど、がんを疑う所見がある場合は、「胆のう腫瘍疑い」として「要精検(精密検査)」と判定されます。結果票に書かれた所見名と判定を確認し、指示された時期に受診しましょう。
まず医療機関で、典型的な所見かどうかを確認します
受診先は、消化器内科や消化器外科が一般的です。医療機関では、腹部超音波検査をあらためて行い、胆のう腺筋腫症として典型的な所見か、胆のうの壁の層構造が保たれているか、胆石を合併していないかを確認します。がんとの区別が必要と判断された場合は、CTやMRI、超音波内視鏡などの精密検査に進みます。
受診の際は、健診の結果票を持参すると、これまでの検査結果と比べやすくなります。
経過観察の間隔の目安
腹痛などの症状がなく、がんを疑う所見もなければ、年1回の腹部超音波検査で経過をみるのが一般的です。ただし、胆のう腺筋腫症の型や所見によって間隔が変わることもあるため、医師の指示に従って検査を続けましょう。
放置するとどうなる?
胆のう腺筋腫症の多くは、大きな変化がないまま経過します。ただし、胆のうにくびれができるタイプ(分節型)では、くびれより先の部分に胆汁がたまりやすく、胆石ができることがあります。
検査を受けないままにしておくと、胆石の合併や、がんとの区別が必要な変化があっても、気づくのが遅れるおそれがあります。症状がなくても、指示された時期の検査は続けましょう。
早めに受診したい症状
次のような症状がある場合は、次回の検査を待たずに受診してください。
- 食後などに、右上腹部やみぞおちの痛みをくり返す
- 発熱を伴う腹痛が続く
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
胆石を合併していたり、胆のう炎を起こしていたりする可能性があります。強い痛みや発熱が続く場合は、夜間や休日でも、救急外来を受診してください。
手術が必要なケース|胆のう腺筋腫症で胆のう摘出を検討するとき
胆のう腺筋腫症は、診断されただけで手術が必要になるわけではありません。手術を検討するのは、主に次の3つの場合です。
腹痛の原因になっている場合
胆のう腺筋腫症そのものが症状を起こすことは多くありません。ただし、食後に右上腹部やみぞおちの痛みや違和感をくり返し、胆のう腺筋腫症が痛みの原因と考えられる場合は、胆のう摘出術を検討します。痛みは胃や腸など、ほかの病気でも起こるため、ほかに原因がないかも確認したうえで判断します。
胆石を合併している場合・胆のう炎を起こした場合
胆のう腺筋腫症に胆石を合併していて、胆石発作などの症状がある場合は、胆石の治療として胆のう摘出術が勧められます。特に、胆のうにくびれができるタイプ(分節型)では、くびれより先に胆汁がたまって胆石ができやすいとされています。
胆のう炎を起こした場合は、まず炎症の治療を受け、そのうえで胆のう摘出術を検討します。胆石の手術を検討する目安は、「胆石の治療は手術が必要?治療法の種類と手術を受ける目安を解説」で詳しく解説しています。
胆のうがんと区別できない場合
CTやMRI、超音波内視鏡などの精密検査を受けても、がんの可能性を否定できない場合は、診断と治療をかねて胆のうを摘出することがあります。摘出した胆のうを病理検査で調べることで、良性かどうかが確定します。
がんが強く疑われる場合は、病変の広がりに応じて手術方法が変わることがあります。当院では、より専門的ながん治療が必要と考えられる場合は、対応可能な医療機関をご紹介します。
手術では胆のうごと摘出します
胆のう腺筋腫症を薬や食事で治す方法はなく、治療が必要な場合は、手術で胆のうを摘出します。胆のう腺筋腫症は胆のうの壁そのものが変化する病気のため、厚くなった部分だけを切り取る方法は一般的ではありません。胆のうごと摘出することで、胆のう全体を病理検査で確認することもできます。
手術は、おなかに小さな穴を開けて行う腹腔鏡下胆のう摘出術が一般的です。手術の流れや体への負担については、「胆のう摘出手術とは?治療の流れ・費用・日帰り手術の適応を解説」をご覧ください。
手術を受ける場合の費用と入院期間、日帰り手術
胆のう腺筋腫症の手術は、胆石の手術と同じ腹腔鏡下胆のう摘出術で行うのが一般的です。そのため、手術費用や入院期間も、胆石の手術と同じように考えることができます。
手術の費用の目安
腹腔鏡下胆のう摘出術には健康保険が適用され、手術料は全国一律です。手術料のみの自己負担は、3割負担の方で64,500円、2割負担の方で43,000円、1割負担の方で21,500円です。
実際には、麻酔や手術前の検査の費用が加わり、入院する場合は入院料や食事代もかかります。日帰り手術であれば、入院料や食事代はかかりません。
1か月の自己負担が上限額を超えた場合は、高額療養費制度によって、超えた分の払い戻しを受けられます。上限額は、年齢や所得によって異なります。マイナ保険証で受診し、限度額情報の提供に同意すると、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えることもできます。
費用の内訳や高額療養費制度、民間の医療保険の給付金については、「胆石の手術費用はいくら?日帰りと入院の違い・自己負担の目安を解説」で詳しく解説しています。
入院期間の目安と日帰り手術
胆石の手術と同じく、腹腔鏡下胆のう摘出術で入院する場合は、2〜7日程度が目安です。胆のう炎を起こして炎症が強い場合や、開腹手術に切り替わった場合は、1〜2週間程度に延びることもあります。
一方、当院のように、胆のう摘出術を日帰りで行う医療機関もあります。条件が合えば、手術当日に帰宅できます。日帰り手術を受けられるかどうかは、全身の状態や持病、胆のうの状態などをもとに、診察で判断します。
手術後の仕事復帰は、デスクワークであれば数日から1週間程度が目安です。入院期間が長くなるケースや、日帰り手術の条件、仕事復帰の目安は、「胆石手術の入院期間は2〜7日が目安|日帰り手術の条件と仕事復帰」で詳しく解説しています。
胆石など胆のう疾患でお悩みの場合は当院までご相談ください
当院では、胆石など胆のう疾患に対して適切な診断を行い、患者さま一人ひとりに合わせた治療方針をご提案しています。
手術が必要かどうかを含めて専門医が丁寧に診断します。お気軽にご相談ください。
JR大阪駅から徒歩3分・土日祝も診療
食事で治せる?日常生活の注意点
「食事を工夫すれば治るのでは」と気になる方もいらっしゃるでしょう。ただ、食事で胆のう腺筋腫症が治ったり、小さくなったりするという根拠はありません。
食事で治る・小さくなるという根拠はありません
胆のう腺筋腫症の原因は、まだはっきりわかっていません。特定の食品をとったり控えたりすることで、胆のう腺筋腫症が治ったり、小さくなったりするという根拠は示されていません。
症状がなく、胆石も合併していなければ、胆のう腺筋腫症のために特別な食事制限が必要になることは通常ありません。バランスのよい食事を心がけましょう。
胆石を合併している場合や、食後に痛む場合の注意点
胆のう腺筋腫症に胆石を合併している場合は、脂っこい食事のとりすぎや食べすぎで胆のうが強く縮み、胆石発作が起こりやすくなります。食後に右上腹部やみぞおちが痛むことがある方は、脂肪の多い食事を控えめにし、1回の食事の量を多くしすぎないようにしましょう。
胆石があるときの食事の注意点は、「胆石の食事で食べてはいけないものは?控える食品とよい食品を解説」で詳しく解説しています。
ただし、食事の工夫は症状を起こしにくくするためのもので、胆のう腺筋腫症や胆石を治すものではありません。痛みをくり返す場合は、手術も含めて医師に相談しましょう。
胆のう腺筋腫症についてよくある質問
Q1.胆のう腺筋腫症になりやすい人や年齢はありますか?
胆のう腺筋腫症は、中高年以降に見つかることが多いとされています。ただ、原因がまだはっきりわかっていないため、なりやすい人の特徴や、予防する方法も明らかになっていません。健診などで腹部超音波検査を受けたときに、偶然見つかることがほとんどです。
Q2.胆のうポリープとの違いは何ですか?
胆のうポリープは、胆のうの内側の粘膜が盛り上がってできる隆起です。一方、胆のう腺筋腫症は、胆のうの壁そのものが厚くなる変化です。どちらも健診の腹部超音波検査で見つかることが多く、大部分は良性です。
手術を検討する目安は異なります。胆のうポリープでは大きさ(10mm以上)や大きくなっているかどうかが、胆のう腺筋腫症では症状や胆石の合併、がんとの区別がつくかどうかが目安になります。胆のうポリープの対応は、「胆のうポリープは手術が必要?大きさ別の対応とがんの見分け方を解説」で詳しく解説しています。
Q3.薬で治すことはできますか?
胆のう腺筋腫症そのものを治す薬はありません。痛みがある場合に、痛み止めなどで症状を和らげることはあります。ただし、症状をくり返す場合や、胆石を合併している場合の根本的な治療は、胆のう摘出術です。
Q4.コーヒーは控えたほうがいいですか?
胆のう腺筋腫症とコーヒーの関係については、はっきりしたことはわかっておらず、コーヒーを控える必要があるという根拠もありません。国内の45〜74歳の男女約9万人を約12年間追跡した研究では、コーヒーを飲む量と、胆のうがんを含む胆道がんになりやすいかどうかに関連はみられませんでした2)。
Q5.手術で胆のうを取ると、生活に影響はありますか?
胆のうを取っても、胆汁は肝臓でつくられ、腸へ流れ続けます。そのため、多くの方は手術前と同じように生活できます。手術後しばらくは、脂っこい食事のあとに下痢をしやすくなる方もいますが、時間とともに落ち着くことがほとんどです。胆のうを取った後の体の変化は、「胆のうを取るとどうなる?摘出後の体の変化と生活の注意点を解説」で詳しく解説しています。
まとめ|胆のう腺筋腫症と言われたら、がん化の心配と手術の必要性を医師と確認しましょう
胆のう腺筋腫症は、胆のうの壁が厚くなる良性の病気で、多くは自覚症状がないまま健診の腹部超音波検査で見つかります。
胆のう腺筋腫症そのものががんに変わるとは考えられていません。ただし、画像検査ではがんとの区別が難しい場合があり、胆のうにくびれができるタイプ(分節型)では、がんの合併に注意が必要とされています。症状がなく、がんを疑う所見もなければ、年1回程度の腹部超音波検査で経過をみるのが一般的です。食事で治るという根拠はなく、検査を受けて変化がないかを確認していくことが大切です。
一方、腹痛の原因になっている場合や、胆石を合併している場合、精密検査でもがんと区別できない場合は、胆のう摘出術を検討します。手術は腹腔鏡下胆のう摘出術が一般的で、条件が合えば日帰りで受けることもできます。健診で胆のう腺筋腫症と言われた方や、経過観察を続けるか手術を受けるか迷っている方は、一度専門医に相談してみましょう。
胆石など胆のう疾患でお悩みの場合は当院までご相談ください
当院では、胆石など胆のう疾患に対して適切な診断を行い、患者さま一人ひとりに合わせた治療方針をご提案しています。
手術が必要かどうかを含めて専門医が丁寧に診断します。お気軽にご相談ください。
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参考文献
1) 生天目信之, 白井良夫, 畠山勝義. 胆嚢腺筋腫症と胆嚢癌との関連. 胆道. 2008;22(2):181-185.
2) Makiuchi T, Sobue T, Kitamura T, et al. Association between green tea/coffee consumption and biliary tract cancer: A population-based cohort study in Japan. Cancer Sci. 2016;107(1):76-83.
3) 日本胆道学会. 胆のうポリープ・胆のう腺筋腫症(市民のみなさまへ).
4) 日本消化器がん検診学会, 日本超音波医学会, 日本人間ドック学会. 腹部超音波検診判定マニュアル(2021年改訂版).
5) 済生会. 胆のう腺筋腫症.
