gallbladder adenomyomatosis胆のう腺筋腫症
胆のう腺筋腫症とは

胆のう腺筋腫症とは、胆のうの壁が部分的または全体的に厚くなる良性の疾患で、胆のう壁の構造変化によって生じます。
胆のうの内側にある粘膜が筋層の中へ袋状に入り込み、胆のう壁が肥厚することが特徴です。このときに形成される小さな陥凹構造(粘膜がへこんだり、くぼんだりした状態)は「ロキタンスキー・アショフ洞(RAS)」と呼ばれ、胆のう腺筋腫症に特有の所見とされています。
胆のう腺筋腫症は、がんのような悪性腫瘍ではなく、原則として良性疾患に分類されます。そのため、必ずしもすべての症例で治療や手術が必要になるわけではありません。一方で、胆のうの構造変化により腹痛などの症状を引き起こしたり、一部の症例では画像検査上、胆のうがんとの鑑別が難しくなることがある点には注意が必要です。
胆のう腺筋腫症は、健康診断や人間ドック、腹部超音波検査やCT検査などで偶然発見されることが多く、自覚症状がまったくないまま経過しているケースも少なくありません。特に中高年以降にみられることが多く、胆石症を合併していることもあります。
胆のう腺筋腫症の原因

胆のう腺筋腫症の原因は、現時点ではまだ完全には解明されていません。
ただし、胆のう内圧の上昇や胆汁の流れの滞り、胆石による慢性的な刺激などが、発症に関与している可能性が指摘されています。また、胆のう腺筋腫症は中高年以降に多くみられることから、加齢に伴う胆のう壁の変化や、胆のう壁に生じる慢性的な炎症が発症に影響している可能性も考えられています。
このように、胆のう腺筋腫症は単一の原因で発症する疾患ではなく、複数の要因が関与して生じると考えられています。
胆のう腺筋腫症の主な症状

胆のう腺筋腫症は、無症状のまま経過することが多い疾患です。健康診断や人間ドック、腹部超音波検査などで偶然発見されるケースが多く、自覚症状がないまま指摘されることもあります。
一方で、症状がみられる場合には、右上腹部やみぞおち周辺の痛み、食後の腹部不快感、張り感などが挙げられます。特に脂っこい食事のあとに胆のうが収縮することで、痛みや違和感が出現することがあります。これらの症状は胆石症や慢性胆のう炎と似ているため、区別が難しいこともあります。
また、胆石を合併している場合には、痛みが強くなったり、発作的な腹痛を繰り返したりすることがあります。
胆のう腺筋腫症の分類
胆のう腺筋腫症は、胆のう壁の肥厚の広がり方によって分類されます。一般的には、次の3つのタイプに分けられます。
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限局型(底部型)
限局型(底部型)は、胆のうの一部、とくに胆のう底部に限局して壁の肥厚がみられるタイプです。胆のう腺筋腫症の中で比較的多くみられるタイプで、健康診断などの腹部エコー検査で偶然発見されることもあります。
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分節型(輪状型)
分節型(輪状型)は、胆のうの一部が帯状または輪状に肥厚するタイプです。肥厚した部分で胆のうの内腔がくびれたようにみえるのが特徴です。
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びまん型(広範型)
びまん型(広範型)は、胆のう全体にわたって壁が肥厚するタイプです。胆のう全体が均一に厚くなるため、画像検査では胆のうがんとの鑑別が問題となることがあり、慎重な評価が必要です。
胆のう腺筋腫症と胆のうがんの違い
胆のう腺筋腫症
胆のう腺筋腫症は、胆のう壁の粘膜や筋層が過形成を起こして厚くなる良性の病変です。これに対して胆のうがんは、胆のう粘膜から発生する悪性腫瘍で、周囲の肝臓やリンパ節へ浸潤・転移する可能性があります。
両者はいずれも「胆のう壁が厚くなる」という共通点がありますが、その性質は大きく異なります。胆のう腺筋腫症では、ロキタンスキー・アショフ洞(RAS)と呼ばれる小さなくぼみが胆のう壁の中に形成されるのが特徴です。病変は原則として胆のう壁の内部にとどまり、周囲の臓器へ広がることはありません。
胆のうがん
胆のうがんでは、壁の肥厚が不整であったり、腫瘤(しこり)として描出されたりすることがあります。進行すると胆のう壁の構造が破壊され、肝臓側への浸潤やリンパ節の腫大を伴う場合があります。
特にびまん型の胆のう腺筋腫症では、画像所見が胆のうがんと紛らわしいこともあるため、超音波検査やCT、MRIなどの画像検査を組み合わせて慎重に評価します。がんの可能性を完全に否定できない場合には、確定診断や安全性を考慮して外科的治療が検討されることもあります。
胆のう腺筋腫症の検査・診断
胆のう腺筋腫症は、主に画像検査によって診断されます。健康診断や人間ドックでの腹部超音波検査をきっかけに指摘されることが多く、まずは画像所見の詳細な評価が重要となります。
腹部エコー検査(超音波検査)

最も基本となる検査は腹部超音波検査です。胆のう壁の肥厚や、ロキタンスキー・アショフ洞(RAS)に伴う特徴的な所見が確認されることがあります。超音波検査は体への負担が少なく、繰り返し行うことができるため、経過観察にも適しています。
CT検査・MRI検査

より詳しい評価が必要な場合には、CT検査やMRI検査が行われます。CT検査では胆のう壁の肥厚の範囲や、周囲臓器への浸潤の有無などを確認します。MRI検査やMRCPでは、胆のう内部構造や胆管の状態をより詳細に把握することが可能です。これらの検査は、胆のうがんとの鑑別が問題となる場合に特に重要となります。
診断にあたっては、症状の有無や画像所見の特徴、胆石の合併の有無などを総合的に評価します。画像上で良性と判断される場合には経過観察となることもありますが、がんの可能性を否定できない場合や症状が持続している場合には、外科的治療も含めた検討が必要となります。
胆のう腺筋腫症の治療法

胆のう腺筋腫症の治療方針は、症状の有無や画像所見、胆石の合併の有無などを総合的に判断して決定されます。すべての症例で直ちに手術が必要となるわけではありません。
無症状で、画像上も良性が強く疑われる場合には、定期的な画像検査による経過観察が選択されることがあります。この場合は、症状の出現や画像所見の変化がないかを確認しながら慎重にフォローします。
一方で、右上腹部痛などの症状が繰り返される場合や、胆石を合併している場合には、外科的治療が検討されます。また、画像検査で胆のうがんとの鑑別が困難な場合や、がんの可能性を完全に否定できない場合にも、確定診断や安全性の確保を目的として手術が選択されることがあります。
外科的治療としては、腹腔鏡下胆のう摘出術が標準的な治療法です。腹部に小さな切開を数か所加え、腹腔鏡を用いて胆のうを摘出します。低侵襲な手術であり、術後の痛みが少なく、回復が早いことが特徴です。
胆のうは摘出しても日常生活に大きな支障をきたすことは通常ありません。胆汁は引き続き肝臓で作られ、直接腸へ流れるため、術後も多くの方がこれまでとほぼ変わらない生活を送ることができます。
